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2017年1月26日木曜日

千種散歩 その2

本日のブログ、長文にして稚拙につきご注意ください。(あ、稚拙はいつも通り。)

配達が終わってから、頼んである雑誌を受け取りに千種正文館にむかう。
この本屋に初めて行ったのは10代の終わり。かれこれ〇〇年も前の事だ。
当時は、美大を目指して浪人していた。
浪人生のくせに、しょっちゅう抜け出してこの本屋で過ごした。
特殊な品ぞろえで、画集もたくさんあった。
ワイエスやベン・シャーン、シーレの画集もここで買った。
シーレなんかは、発売日が結構延びたと記憶している。内容が引っ掛かったり、引っ掛からなかったりしたんだろうと思う。


この本屋さんの2階に喫茶店ができた。
展覧会や演奏会も開かれている。
店の名前は 「喫茶モノコト~空き地~」。
せっかくだから、ここでお茶を飲む。
ここに来るのは2回目
前回もそうだが、店主と思わしき男性がいいタイミングで声をかけてくれて、展示について説明してくれたりする。質問にも詳しく答えてくれる。
日頃、自宅と花屋の往復で終わる生活を送っていると、ちょっと本屋に出かけたり、ちょっとした展覧会をみると もうワクワクしてしまって、脳みそが暴走する。
聞きたいことがあり過ぎて、丁寧に説明してくれているにもかかわらず 自分の欲しい情報が掴めたとたんに食い気味で矢継ぎ早に質問を投げつけてしまう。

というか、早く聞きたいこと聞かないと、
何を聞きたかったか忘れちゃうんだもん。



展示は 中国の農民画。
とても豊かだと思った。画面いっぱいに描かれた農作物やら人やら・・・。
女性の髪形が全部「ちびまる子」ちゃんだったり、余白がすべて落花生で埋め尽くされていたり・・・。豊かでユニークで楽しくて、みてるとニヤニヤしてくる。
「豊かですね。」と感想を述べると、「本当にそうなんです。豊かですよね。」と返してくれた。


あたたかいチャイを注文して、北側の大きな窓から入る柔らかい光を眺める。
外は寒いが良いお天気で、怖いくらい心地いい時間が流れる。
来てすぐに気になっているBGMもいい。(帰りにだれのCDか聞かなきゃ。)
「あちらの本、よかったらお席でご覧いただけますよ。」と展示作品関連の本を勧めていただいたが、ボンヤリする贅沢を優先した。


ここには、メインの展示以外に
雑貨や古道具、書籍も並べて販売されている。
『みつばちハッチ』(わかる?)のおしりみたいな手編みの帽子が売られていた。
愛らしくって、中でも黄色のそれに惹かれたが(だってハッチだもん。)、
その帽子は、10代20代の女の子がかぶってこそ愛らしい代物で、
「おばさんがかぶるとイタイよ。」と自分に言い、目で愛でるだけにしておいた。


作家さんの小品も売られている。
木彫りの丸っこい生き物が白いふわふわ(どうやらこれも木に彩色したものだと思われる)を持っている。その白いふわふわは、溜め息を集めたものなんだって。
溜め息を集めると綿菓子?金平糖型のソフトクリーム?みたいにふわふわになるんだ!
なんという可愛らしさだ。
この作品の元となった本も一緒に並べられていた。


他に私の気を引いたのは、赤ちゃんをくるんだ布をくわえて飛んでいる小さな木製のコウノトリが、円い洗濯干しのような物に釣り下がっている(メリーゴーランド状とでも言うか)もの。
価格を見ると1800円!!安い!安すぎる!!これも妙に愛らしいのだ。
絶対に安すぎる。欲しい。
だが、この愛らしい空中メリーゴーランドが我が家に来たところを想像してみると、愛らしさが仇になるというか、台無しになるというか。
これも、目で愛でるだけにしておいた。


帰りしな かかっているCDが誰のものか聞いた。
「タカタワタルさんの『ごあいさつ』というCDです。」
1970年か1971年に出たと思う。タカタさんは、日本のミュージシャンに大変影響を与えた人で、特にこのアルバムはそうだった。と説明してくれる。
この店主(だと思う)は店にあるものすべてに造詣が深い。愛情たっぷりだ。


私「ここに並んでます?」(おい!そこに並んでるのは本だろ)
店主「(小声で)CDなんで・・・。この本の詩を歌にしたのが入ってます。」



その詩が書かれているページを開いて見せてくれる。
今日は、絵も音楽も詩も みな同じように
やわらかく あたたかく にこやかで 素朴 だ。
つまり、ちいさな奇跡 だ。
(この詩集は連れて帰ることにした。)
私「そのCDにさっきの女の子が歌っている曲も入ってるんですか?」
店主「それはまた別のCDです。」
違いの分からない女で、お恥ずかしい。
ニシオケンさんとニシモトサユリさんの『ズビズバー』というCDらしい。
普通には売っていないだろうとのこと。
「ネットで探せば見つかるかもしれません。」と教えてくれた。


今は昔のようにむさぼるように画集を見ることはあまりなくなった。
当時を思うと、眩しいものを見るような気がする。
出来るものなら戻りたいとも思ってしまう。
でも、今日のような小さな奇跡を見つけることは出来なかったろうと思う。
まあ。これでいいのだ。


と、自分を慰める大人の散歩であった。


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